猫を抱いて象と泳ぐ 小川 洋子
小川 洋子
文藝春秋
少年は産声をあげずに生まれた。
上唇と下唇が癒着したまま生まれた。
すぐに手術が行われ切り離され、脛の皮膚が移植された。
大きくなるにつれ少年の唇に産毛がはえだした。
母は父と離婚し祖父母の下にやって来たが
突然脳出血で亡くなった。
今は家具職人の祖父と、祖母と、弟の4人暮らし。
少年は祖母と弟と一緒にデパートに行くのが楽しみだった。
弟は祖母と店内を見て歩き
少年はいつも屋上にいた。
昔、屋上に象のインディラがいた。
小象だったインディラは屋上で愛嬌を振りまいていた。
イベントがおわり地上に降ろそうとしたが
インディラは大きくなりすぎていた。
インディラはそのまま屋上で一生を終え
足輪が残された。
いつも少年はインディラのことを想い描く。
少年の家と隣の家の間の壁に
少女がはまり込んで抜けられなくなったと言う話が伝わっている。
少年はその少女をミイラと呼び
ベッドの中で壁に向かって話す。
ある日
少年は学校のプールで死体をみつける。
バスの運転手だった。
亡くなった運転手が住んでいた独身寮に少年は出かけた。
寮の庭に廃バスが置かれていた。
バスの中は住居になっていた。
ぷくぷくと太った男が住んでいた。
ポーンと名付けられた猫と住み
甘いお菓子とチェスを愛する男だった。
少年は男をマスターと呼んだ。 そして 少年の呼び名はリトル・アリョーヒン。 少年を チェスと言う海に放ち導いた。 「博士の~」の読みやすさと 「薬指の標本」「沈黙博物館」のような幻想的で 独特の美しさをもつ小説です。 小川洋子ここに有り。 チェスの棋譜の詩が チェスを知らないおばちゃんにも聞こえました。 「c5」 「N×d4」 「Bg5」 「f4」 「Q×g5」 ……… 「B×e3+」
少年は男からチェスを教えてもらい
マスターは
盤下の詩人リトル・アリョーヒンの人生の詩。
そばに置きたい本。
「e4」


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